JUNTENDO UNIVERSITY
血液内科の紹介患者さまへ代表的な血液疾患の解説患者さまの為の解説研修医オリエンテーション順天堂大学の学生諸君へ入局案内
 
平成14年度卒業試験 本試験問題 血液内科PAGE 1 2 3 4 5 6 [7] 8 9

91.  48歳,男性。2年前C型肝炎ウイルスによる肝硬変と診断を受け,通院治療を受けている。1ヶ月前頃より腹部の膨満感が出現し,右上腹部痛も認めている。腹囲は1ヶ月で14cm増加し,身体所見では腹部に波動+,超音波検査上著明な腹水の貯留を認め,試験穿刺により腹水を採取した。次の検査所見のうち,肝硬変以外の成因による腹水を示すのはどれか。

解答形式:正答 →
a比重1.015
b蛋白濃度 4.5 g/dl
cRivalta反応陰性
d細胞数 300/μl
e細胞成分:組織球主体


解説;肝硬変による腹水であれば漏出液の性状を示す。したがって,比重1.015以下,蛋白濃度2.5g/dl以下,Rivalta反応陰性,細胞数1000/μl以下(組織球・中皮細胞主体)が期待される検査所見である。蛋白濃度4.5g/dlであれば滲出液の可能性がある。滲出液の性状を示した場合,肝癌の合併やその他の炎症性疾患の鑑別が必要である。なお,滲出液であってもRivalta反応の陽性率は50%程度とされており,本検査は感度の高い検査ではなく,蛋白定量が可能であれば実施する必要はない。
 

92.10歳,女児。急性リンパ性白血病にて外来化学療法を継続中。数日来頭痛を訴えていたが,昨夕より40℃の発熱を認め,本朝意識消失して救急車で来院した。来院時の血糖値160 mg/dl。項部硬直を認め,髄液の採取を行なった。次の所見のうち,白血病細胞の脳・髄膜浸潤としては観察しがたいのはどれか。

解答形式:正答 →
a外観:透明,水様
b髄液蛋白 50 mg/dl
c髄液グルコース 15 mg/dl
d細胞数 300/μl(単核細胞主体)
e髄液Cl 105 mEq/l


解説;白血病細胞の脳・髄膜浸潤と化膿性髄膜炎が鑑別診断上重要である。白血病細胞の髄液浸潤の場合,細胞増加により軽度の糖の低下を認めることがあるが化膿性髄膜炎に比すと一般に軽度である。
 

93.68歳,男性.慢性気管支炎にて通院中。咳嗽,喀痰の増加を認め,39℃の発熱もあり入院。膿性の患者喀痰を塗抹,グラム染色した。鏡検では,多数の白血球とともに,グラム陰性の太い桿菌を認め,周囲に莢膜を伴っていた。起因菌として可能性の高い菌はどれか。

解答形式:正答 →
aアスペルギルス
b肺炎桿菌
c緑膿菌
dインフルエンザ菌
e黄色ブドウ球菌


解説;慢性気管支炎という呼吸器系の基礎疾患を持っている患者.膿性の喀痰,グラム染色で白血球が多数みられることから,この喀痰は病巣から得られている可能性が高い.そこに,グラム陰性の太い桿菌を認め,さらに莢膜を有していることなどから,肺炎桿菌を起因菌として推定できる.インフルエンザ菌はグラム陰性の小さな短桿菌.緑膿菌も慢性気道感染では定着しやすい菌であり,粘液産生型であるムコイド型の場合には,グラム染色で緑膿菌と推定することが可能である.
 

94.9歳,女児。高度の頭痛,高熱,頻回の嘔吐を主訴として来院。髄液は混濁しており,細胞数1230/μl(多核球82%,単核球18%)。髄液のグラム染色を別に示す(別紙 No.16)。推定される起因菌はどれか。

(別紙 No.16)

解答形式:正答 →
a髄膜炎菌
bリステリア菌
c肺炎球菌
dインフルエンザ菌
e大腸菌


解説;症状,髄液所見から急性化膿性髄膜炎が疑われる。グラム染色所見では,グラム陽性の双球菌であることと患児の年齢から,肺炎球菌と考えてよい。髄膜炎菌はグラム陰性球菌,リステリア菌はグラム陽性桿菌,大腸菌はグラム陰性桿菌,インフルエンザ菌はグラム陰性の短桿菌である。化膿性髄膜炎は内科の救急疾患であり,迅速な対応が要求される。神経症状や乳頭浮腫がないことを確認の上,腰椎穿刺にて髄液を採取し,グラム染色,抗原検査,培養検査を行なうことが基本である。起因菌は,年齢により頻度が異なる。小児から青壮年では,肺炎球菌,インフルエンザ菌および髄膜炎菌が多い(ただし最近の日本では,髄膜炎菌による髄膜炎は非常にまれ)。
 

95.44歳,主婦。地域健診で尿糖陽性を指摘され,精査のため来院。母親が糖尿病で食事療法を行っている。尿蛋白(−),尿糖(−)。生化学検査:空腹時血糖 117 mg/dl,AST(GOT) 22 IU/l,ALT(GPT) 28 IU/l,尿素窒素 20 mg/dl,クレアチニン 1.0 mg/dl。正しいのはどれか。

解答形式:正答 →
a空腹時血糖が126mg/dl未満であるため経過観察とした。
b地域健診の尿糖陽性は一過性のため心配ないと説明した。
c腎性糖尿と考えられると説明した。
d家族歴もあり糖尿病と考えられる,と説明した。
e経口糖負荷試験が必要と説明した。


解説;健診時尿糖陽性であったが,血糖は不明。@腎性糖尿か耐糖能異常が存在するための尿糖陽性かの鑑別,A空腹時血糖が耐糖能正常域を越えているため,まず耐糖能異常の存在・程度を確認する,必要がある。健診で尿糖陽性,来院時尿糖陰性は血糖値の変動による可能性がある。
 

96.59歳,女性。健診で高血圧を指摘され来院。来院時,血圧186/104 mmHg,全身倦怠感,脱力感があった。血清電解質はNa 158 mEq/l,K 2.6 mEq/lであった。本例の検査所見として考えられるのはどれか。

解答形式:正答 →
a代謝性アルカローシス
b高トリグリセライド血症
c代謝性アシドーシス
d高HDLコレステロール血症
e高Ca血症


解説;高Na血症,低K血症,高血圧症を来す疾患は,副腎に何らかの異常がある原発性アルドステロン症,Cushing症候群,Liddle症候群,グリチルリン酸などの薬剤を考える。これらの疾患では代謝性アルカローシスとなる。脂質代謝異常、高Ca血症は合併症ではない。
 
問 次の文を読み、97〜98の問題に答えよ。
76歳男性。全身倦怠を主訴に来院した。 血液検査所見: RBC 2.62×106/μl,Hb 7.9g/dl,Ht 23.5%,WBC 1.8×103/μl,Plt 97×103/μl。血液形態所見では好中球の核過分節や偽Pelger核異常を認めた。血清ビタミンB12値,葉酸値には異常を認めなかった。

97.上記以外に本例で認められる末梢血液形態所見はどれか。2つ選べ。
解答形式:正答 →
a巨大血小板
b赤血球連銭形成
c好中球顆粒欠損
d花細胞 (flower cell)
ehairly cell


解説;高齢者で、汎血球減少と血球に特徴的な異型性を認め、骨髄異形成症候群が最も疑われる。巨赤芽球性貧血でも汎血球減少や血球異型性を認めるが、MCVが著明に上昇し,大球性貧血となる。 Flower cellは、核の切れ込み、分節の著しいATL細胞である。Hairly cellは、細胞表面に多数の突起を示すリンパ球で、慢性リンパ性白血病の一亜型hairly cell leukemia (HCL)で認める。(97.98関連問題)
 

98.本例の骨髄検査所見として見られないのはどれか。

解答形式:正答 →
a巨核球形態異常
b芽球比率8%
cM(Myeloid)/E(Erythroid)比正常
d形質細胞比率20%
e骨髄有核細胞数増加


解説;骨髄異形成症候群の骨髄は、正形成〜過形成で、芽球比率は、正常〜わずかに増加している。M/E比はさまざまで赤芽球過形成の場合と顆粒球系過形成の場合がある。形質細胞の異常増殖は,多発性骨髄腫の特徴的所見である。(97.98関連問題)
 

問 次の文を読み,99〜100の問題に答えよ。
57歳の女性。腹部膨満感を主訴に来院した。
血液検査所見: RBC 5.32×106/μl,Hb 14.9g/dl,Ht 45.2%,WBC 98.0×10
3/μl(骨髄球8%,後骨髄球13%,桿状核好中球26%,分節核好中球31%,好酸球7
%,好塩基球4%,単球1%,リンパ球10%),Plt 801×103/μl。血清検査でCRPの上昇は認めない。血清ビタミンB12値の上昇を認めた。

99.確定診断につながる染色体異常はどれか。

解答形式:正答 →
at(8;21)
bt(15;17)
ct(1;19)
d21トリソミー
et(9;22)


解説;5万/μLを越える白血球数の著増を認め,反応性白血球増多よりも腫瘍性の増多を疑う。脾腫,血小板増多, 未熟顆粒球の末梢血液中への出現,好塩基球および好酸球増多、またビタミンB12が上昇から慢性骨髄性白血病(CML)を疑う。 CMLの染色体異常は、t(9;22); Philadelphia染色体である。
(99.100関連問題)
 

100.問題99の染色体異常が認められた。本例で認められる検査所見はどれか。

解答形式:正答 →
a好中球アルカリホスファターゼ(NAP)活性低値
bファゴット(faggot)細胞
c異型リンパ球
d好中球過分葉
e白血病裂孔


解説;CMLでは、好中球アルカリホスファターゼ(NAP)活性は低値を示す。
(99.100関連問題)
 

問 次の文を読み,101〜102の問題に答えよ。
62歳男性。無職。
現病歴:50歳頃健診にて糖尿病を指摘されるが,精査も治療も受けていない。3年ほど前より,夜間の口渇が強く,毎晩「レモン果汁飲料」1.5リットルを飲み,夜間に4〜5回排尿に起きるという生活をしている。2ヶ月前より夜間排尿回数が0〜1回と減り,最近2週間ほどは全身倦怠感と食欲不振,嘔気,嘔吐が見られるようになり来院した。
検査所見:尿検査(試験紙法):尿比重1.030,蛋白2+,潜血±,尿糖±,ケトン体陽性。尿沈渣:赤血球20〜30個/毎視野,白血球5〜10個/毎視野,諸種の円柱を多数認める。血液検査:赤血球 3.30×106/μl,Hb 9.9 g/dl,Hct30.0%,白血球 7.8×103/μl,血小板 220×103/μl。総蛋白6.7 g/dl,アルブミン3.5 g/dl,尿素窒素 85mg/dl,クレアチニン7.6 mg/dl,血糖 220mg/dl。

101.本例の検査所見の解釈として誤りはどれか。2つ選べ。

解答形式:正答 →
a糖尿病性ケトアシドーシスである。
b尿定性所見にはビタミンCによる妨害がある。
c貧血は正球性正色素性である。
dネフローゼ症候群に相当する病態である。
e糸球体濾過量は50 ml/分程度と予測できる。


解説;糖尿病性腎症を疑う病歴を示す患者で,クレアチニン値から末期腎不全にあると考えられ糸球体濾過量は相当低い(20ml/分以下)と考えられる。血糖が高く,ケトン体陽性であり,糖尿病性ケトアシドーシスの状態にあると考えられるが,尿検査では尿糖が余り出現していない。これは糸球体濾過量の低下による相対的な再吸収増加も関与するが,本例では尿沈渣赤血球数に比して潜血反応も弱く,尿糖とともにビタミンCによる妨害を受けている可能性が示唆される。貧血はMCV91,MCHC33と正球性正色素性である。尿蛋白は比較的多いが,尿量が不明で,血清総蛋白量,アルブミン量などからはネフローゼ症候群の病態が形成されているとは判断できない。
(101.102関連問題)
 

102.この患者の血液検査所見として考えにくいのはどれか。

解答形式:正答 →
aK  5.4 mEq/l
bCa  7.3 mg/dl
cP  5.8 mg/dl
dHCO3− 30 mEq/l
eβ2ミクログロブリン増加


解説;糖尿病性ケトアシドーシスおよび腎不全による代謝性アシドーシスであり,血中HCO3―は低下する。慢性腎不全では血中β2ミクログロブリンは排泄低下により増加する。
(101.102関連問題)
 

問 次の文を読み,103〜104の問題に答えよ。
78才,男性。脳血管性痴呆により入退院を繰り返している。数日前から湿性
咳嗽および発熱があり,誤嚥性肺炎の診断で入院した。第3世代セフェム系抗
菌薬の経静脈投与が10日継続されている。咳嗽および発熱は改善していたが,
入院10日目より下痢が出現し,次第に増強した。抗菌薬をニューキノロン系
薬に変更したが,下痢症状の改善がみられない。便の塗抹鏡検では白血球を多
数認めた。同じ病棟の患者や医療スタッフには下痢のものはいない。

103.この患者の下痢便の細菌検査で目標とすべき菌はどれか。2つ選べ。

解答形式:正答 →
aカンピロバクター
bデフィシル菌
c黄色ブドウ球菌
dセレウス菌
e腸炎ビブリオ

解説;経過からは,薬剤関連腸炎,とくにクロストリジウム・デフィシルによる偽膜性腸炎が疑われる。また,黄色ブドウ球菌のうちMRSAは,菌交代症による腸管感染を起こすことがある。この2菌種を念頭において検査を進める必要がある。なお,偽膜性腸炎の診断のためには,大腸内視鏡による偽膜の確認,便中の菌毒素(デフィシル・トキシン)の検査が必要である。赤痢菌,腸炎ビブリオ,サルモネラは健常人でも腸管感染症を起こす。また,大腸菌,カンピロバクターによるものも多い。下痢便の細菌検査としては,もちろんこれらの細菌を除外する必要はある。しかし,このケースで院内での食中毒は考えにくい。
(103,104関連問題)
 

104.本例でもっとも有効と考えられる抗菌薬はどれか。

解答形式:正答 →
aバンコマイシン
bカナマイシン
cミノサイクリン
dポリミキシンB
eクリンダマイシン


解説;薬剤関連腸炎の治療の原則は,第一に原因薬剤の中止である。それだけで治癒する場合もあるが,下痢が止まらない場合には抗菌薬の投与が必要となる。クロストリジウム・デフィシルあるいはMRSAが起炎菌の可能性が高い。
両菌に共通して有効な薬剤は,選択肢のなかではバンコマイシンのみである。
なお,クリンダマイシンは偽膜性腸炎の原因となることがあり,このケースでは禁忌である。
(103,104 関連問題)
 

問 次の文を読み,105〜106の問題に答えよ。
57才男性。 くも膜下出血後の水頭症のためVPシャント形成を受けた。術
後、発熱を繰り返し,シャントに感染を起こしている可能性が高い。そこで,
起因菌の検索のため血液培養を行なった。

105.血液培養について正しいのはどれか。

解答形式:正答 →
a採血は抗菌薬投与の30分後に行なう。
b嫌気培養のみ行なえば良い。
c採取部位や時期を変えて複数回採取すべきである。
d採血時の皮膚消毒はクロルヘキシジンで行なう。
e複数の菌が検出された場合同時感染の可能性が高い。


解説;血液検体は本来無菌的な検体であり適正な採取法で得られた検体から培養された菌は,起因菌の可能性が高い。難点は陽性率が低いことであり,検出率を高めるため,複数回採取することが望ましい。抗菌薬投与開始後は,培養陰性になりやすいので,抗菌薬の血中濃度がもっとも低い時に採取する。また皮膚消毒が重要で,クロルヘキシジン単独では消毒が不十分であり,コンタミネーション(汚染)の可能性が高くなる。そのため,アルコールの併用あるいはポピドンヨードなどが用いられる。複数の菌が検出された場合は,汚染の可能性が高く再検査すべき。血液培養で嫌気性菌が検出される頻度は少ないが,嫌気性菌による菌血症もあり,好気培養・嫌気培養ともに必要である。
(105,106 関連問題)
 

106.血液培養の結果,血液培養のグラム染色で,(別紙 No.17)に示す菌が多数認められた。可能性の高い菌はどれか。

(別紙 No.17)

解答形式:正答 →
a肺炎球菌
b緑膿菌
cウェルシュ菌
d黄色ブドウ球菌
eクリプトコッカス


絵解説;血液培養のグラム染色において,グラム陽性の球菌がブドウの房状に塊をなしていることが見て取れる。このことより,選択肢からは黄色ブドウ球菌を選ぶ。大学病院などの高度医療施設で,カテーテル関連感染症を疑われた血液培養検体から得られる菌としては,コンタミネーションを除けば,黄色ブドウ球菌(MRSAを含む)がもっとも多い。その場合,人工関節やVPシャントチューブ,あるいはIVHカテーテルなどの人工物への感染が,菌血症の原因となっており,付着した菌がバイオフィルムを形成し抗菌薬が効きにくいため,治療・除菌に難渋することがしばしばである。
(105,106 関連問題)
 

page topnext
6年生
卒業試験 > 平成11年度
卒業試験 > 平成12年度
卒業試験 > 平成13年度
卒業試験 > 平成14年度
卒業試験 > 平成15年度
卒業試験 > 平成16年度 
卒業試験 > 平成17年度 
血液内科プレレジデントコース案内
M6 必修コース
5年生
BSL案内
BSL プレテスト、ポストテスト(正答)
BSLでの学習フローチャート
4年生
血液学各論 (臨床医学VI)講義内容
MAからM5に上がる時のバリア試験
| ホーム | 血液内科の紹介 | 患者さまへ | 代表的な血液疾患の解説 | 患者さまのための解説 | 研修医オリエンテーション | 順天堂大学の学生諸君へ | 入局案内 |