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BSLでの学習 5年生用 
 症候1PAGE [1]   
1. 貧血の定義
 WHO の基準では、ヘモグロビン濃度(Hb)が男性で 13 g/dL、女性で 12 g/dL  未満の場合、貧血と診断される。患者が「よく貧血をおこす」という場合、一般的には立ちくらみのことを言っている場合が多いので注意を要する。 
2. なぜ貧血がみられるのか?
 原因として赤血球産生の低下、出血、脾臓への貯留、赤血球破壊の亢進(溶血性貧血)に分けられる。また遺伝学的には、先天性異常と後天性異常に分類される。

1) 赤血球産生障害

後天的には鉄欠乏性貧血が最も多く、まれに悪性貧血などのビタミンB12 欠乏症、葉酸欠乏症などがある。
一方、造血幹細胞または造血環境の障害にもとずく貧血として、再生不良性貧血(aplastic anemia)、赤芽球癆(pure
red cell aplasia)がある。その他、白血病、骨髄異形成症候群、慢性腎不全(エリスロポエチン産生障害による腎性貧血)がある。

2) 溶血性貧血(hemolytic anemia)

先天性と後天性、赤血球自体に異常があるものと赤血球以外に異常があるもの、溶血の場により血管外溶血と血管内溶血に分けられる。先天性疾患では、赤血球膜の異常(遺伝性球状赤血球症、遺伝性楕円赤血球症)、ヘモグロビン合成障害(サラセミア、グルコース-6-リン酸脱水素酵素 [G6PD] 異常症、ピルビン酸キナーゼ[PK] 異常症)が多い。後天性疾患で多いものは、自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、発作性夜間血色素尿症(PNH)であり、AIHA は自己抗体や補体が赤血球膜に結合すること、PNH では血球表面にあるGPI アンカー蛋白の欠損による補体感受性の亢進が原因である。
 
3. 病歴聴取、身体所見のポイント
 1) 病歴聴取のポイント

 症状は、ヘモグロビン濃度と低下のスピード、心肺機能、年齢などにより大きく左右される。出血が急速にかつ大量におこると、頻脈、血圧低下をきたすが、長期間に少しずつ貧血が進行した場合は、著しい貧血であっても自覚症状に乏しいこともある。一般的な症状としては臓器の酸素欠乏による症状、すなわち全身倦怠感、易疲労感、めまい、立ちくらみ、動悸、息切れ、頭痛などが多い。

 家族歴から、先天性か後天性か当たりをつける。既往歴では、胃または腸切除を受けていないか確認する。鉄欠乏性貧血の原因として、男性では消化管出血、女性ではさらに過多月経、不正性器出血が多い。したがって吐下血、痔出血の他に、女性ではさらに過多月経、不正性器出血の有無について必ず確認する。食事内容についても、偏食せずにきちんと摂取しているか確認する。また溶血性貧血では感染、薬剤投与、ストレスが原因で溶血発作をおこすことがある。

2) 身体所見のポイント

 眼瞼結膜の他に爪床の色調をみて、貧血の有無を判断する。溶血性貧血の場合は、黄疸が加わるため、皮膚は特徴的なレモン色を呈する。胸部では、循環血漿量の増加に伴い、胸骨左縁で収縮期雑音を聴取する。腹部では、消化性潰瘍による心窩部
の圧痛、胃癌や大腸癌による腫瘤、痔核、脾腫の有無を確認する。鉄欠乏性貧血で
は、さじ状爪(spoon nail)、悪性貧血では、舌炎(Hunter 舌炎)、白髪、神経症状(位置覚、振動覚の低下)をみる。
 
4. これからどういう検査をどういう手順でするのか?
 まず血算より赤血球指数を計算し、正球性正色素性、小球性低色素性、大球性貧血か鑑別する。同時に網赤血球数を計算し、貧血が赤血球産生の低下によるのか(網赤血球減少)、出血または溶血によるのか(網赤血球増加)鑑別する。赤血球の形態観察も重要であり、奇形赤血球の有無を観察するとともに、白血球数とその分画、血小板数の異常の有無を確認する。汎血球減少の場合は、再生不良性貧血、骨髄異形成症候群、白血球数の増加を示す場合は白血病を疑う。

1) 小球性低色素性

頻度的に最も多いのは鉄欠乏性貧血であり、血清鉄、総鉄結合能、フェリチンを測定する。鉄欠乏性貧血では、血清鉄低下、総鉄結合能増加、フェリチン減少を示す。これらが正常の場合はサラセミアを疑う。一方、二次性貧血では血清鉄低下、総鉄結合能減少、フェリチン増加を示す。鉄欠乏性貧血が確定したら、便潜血検査と同時に消化管の検査、女性では子宮筋腫などの婦人科的検索を行う。

2) 大球性貧血

ビタミンB12、葉酸欠乏症を除外するために、血清ビタミンB12 および葉酸値を測定する。ビタミンB12 の低下をみたら、悪性貧血を除外するために、上部消化管内視鏡検査の他に、抗内因子抗体をチェックする。また骨髄穿刺を行い、巨赤芽球、好中球過分葉などの血球の形態異常を観察する必要があるが、ビタミンB12、葉酸が正常であるのに形態異常が明らかな場合は、骨髄異形成症候群を疑う。

3) 正球性正色素性貧血

網赤血球の増加から溶血性貧血が疑われる場合には、LDH、間接ビリルビン、ハプトグロビン値を測定して溶血の存在を確認し、さらに自己免疫性溶血性貧血を除外するためにクームス試験を行う。PNH が疑われる場合は、ショ糖試験、ハム試験、ヘモジデリン尿の他に、血球のCD 16、55、59 などをフローサイトメトリーで測定してGPI アンカー蛋白の欠損を確認する。いずれにしても骨髄の検査が必要になる場合が多いが、溶血性貧血では赤芽球過形成像、赤芽球癆では赤芽球の著しい減少、再生不良性貧血では低形成骨髄(脂肪髄)を示す。遺伝性球状赤血球症では赤血球浸透圧脆弱性試験、ヘモグロビン異常症では、ヘモグロビン分析などの特殊検査が必要である。
 
5. 診断、鑑別診断は?
 病歴、身体所見、検査所見より鑑別する。 
6. 治療はどうしたらよいか?
 鉄欠乏性貧血では鉄剤の投与の他に、出血源に対する治療が必要である。ビタミンB12、葉酸欠乏症ではそれぞれ補充療法を行う。
自己免疫性溶血性貧血には、ステロイドを投与する。二次性貧血では、基礎疾患に対する治療が重要である。遺伝性球状赤血球症では脾摘が有効である。
 
7. 退院後の注意点( patient education )は?
 食事はバランスよく摂取する。溶血性貧血では不必要な薬剤の投与、ストレスを避けるようにする。 
 症候2  
1. なぜリンパ節腫脹がみられるのか?
 リンパ節腫脹は白血球の増殖、浸潤、癌細胞の転移により生じる。 
2. 原因となる疾患、病態は?
 腫瘍性疾患と非腫瘍性疾患に2大別される。腫瘍性疾患には、悪性リンパ腫、固形癌のリンパ節転移があり、非腫瘍性疾患には感染症、膠原病、皮膚病性リンパ節症、サルコイドーシス、代謝性疾患などがある。 
3. 病歴聴取、身体所見のポイント
 5-10 mm 程度以下の頚部、鼠径リンパ節腫脹は、上気道炎、外陰部の軽微な感染症などでもしばしば認められるので、臨床的意義に乏しい。まず悪性リンパ腫、固形癌の転移を除外する必要がある。これらの疾患では、通常圧痛がない! 圧痛があるのは、感染症(特に多くみられるのは、ウイルスによる上気道感染)である。悪性リンパ腫では、硬いが弾力性に富み(弾性硬、ゴムのような感じ)、固形癌の転移では、弾力性がない硬さ(木片、石のような感じ)を示す。次に、リンパ節腫脹の部位、またいつから腫れてきたのか確認する。急性感染症では数日の単位で、一方、悪性リンパ腫、固形癌の転移、結核などの慢性感染症(圧痛なし)では数カ月単位の経過を示す(患者はいつから腫れてきたかはっきり解らないことがある)。Virchowのリンパ節(左鎖骨上窩)腫脹は胃癌などの消化管の悪性腫瘍でみられる。 
4. これからどういう検査をどういう手順でするのか?
 一般検査を行った後、リンパ節生検が必要かどうか見極める必要がある。吸引細胞診ではリンパ節の全体的構築が解らないために迅速な診断を遅らせ、さらに悪性リンパ腫の場合は診断的価値に乏しいので、原則として避けるべきである。急性感染症が疑われる場合、生検は必ずしも必要ではなく、大きさや経過をみて次第に増大するようであれば考える。生検にあたっては、1cm 以下では診断的価値に乏しいことが多く、できるだけ大きな材料を得るようにする。特に、鼻咽腔など耳鼻科領域の生検材料は、壊死や挫滅が多いので数カ所から採取するようにする。また、摘出した標本は、ホルマリンにつける前に、必ずその半分は無菌的に生理的食塩水に浸したガーゼに包み、滅菌シャーレにいれ、生のまますみやかにスタンプ標本、表面マーカー、染色体分析用に処理する。残りの材料は、遺伝子診断用(病理組織標本や表面マーカー検査でも、悪性リンパ種かどうか診断がはっきりしないことがある!)に凍結保存しておく。悪性リンパ腫など全身的なリンパ節腫脹が疑われる場合は、腹部超音波、胸部および腹部 CT スキャン、Ga シンチ、骨髄穿刺および生検が必要になる。 
5. 診断、鑑別診断は
 病歴、身体所見、検査所見より、原因を予測する。
腫瘍性疾患?非腫瘍性疾患? 腫瘍性疾患であれば、悪性リンパ腫?固形癌の転移?非腫瘍性疾患としたら感染症? その他?(膠原病、皮膚病性リンパ節症、サルコイドーシス、代謝性疾患など)
最終的には、リンパ節生検により確定する。
 
6. 治療はどうしたらよいか?
 固形癌の転移以外は、悪性リンパ腫を含め治療により治癒する可能性がある。悪性リンパ腫の治療方針、予後は病型(組織型、マーカー、染色体、遺伝子変化)とinternational prognostic index( IPI ):年齢、全身状態(performance status; PS )、臨床病期、LDH値、節外病変の数、によって決定される(化学療法、放射線照射、造血幹細胞移植)。
感染症その他の全身性疾患は、それぞれの治療を行う。
 
7. 退院後の注意点( patient education )は?
 疾患により異なるが、悪性リンパ腫では、ひき続き化学療法を継続する症例が多く、特に好中球減少時は感染に注意し、発熱したらすぐ来院するように指導する。 
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