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代表的な血液疾患の解説
総論
血液疾患の特徴と分類
血液疾患の診断
血液疾患の治療
白血病・リンパ腫・骨髄腫の診断と治療のポイント
各論
鉄欠乏性貧血・溶血性貧血
再生不良性貧血と骨髄異形成症候群
多血症・骨髄繊維症・本態性血小板血症
慢性骨髄性白血病の特徴
急性白血病
悪性リンパ腫
多発性骨髄腫
出血傾向
造血幹細胞移植
血液疾患に合併する感染症
急性白血病
病態と診断のポイント
 
 

1)急性白血病の分類は,FAB分類が基本である。

2)急性白血病はMPO染色(3%)によって,リンパ性白血病と骨髄性白血病に大別される。

3)骨髄中の芽球(腫瘍細胞)の割合(30%)により,急性白血病と骨髄異形成症候群に大別される。

4)骨髄性白血病はM0〜M7,リンパ性白血病はL1〜L3に分類される。

5)病型により予後が予測でき,治療の決定に不可欠である。

6)M2のt(8 ; 21),M3のt(15 ; 17),M4Eoのinv(16),L3のt(8 ; 14)のように,病型により特異な染色体異常を認める。


 
 
1.急性白血病の分類
(1)FAB分類とは
急性白血病の分類には,フランス,アメリカ,イギリスの血液学者が協力して1976年に発表したFrench-American-British(FAB)分類が用いられる。

FAB分類はその後,幾度か改訂されて現在に至っている。1985年にM7が追加され,免疫学的マーカー検査や特殊な細胞化学染色が必要だったり,単なる形態分類からは逸脱してきている。しかし,FAB分類は基本的には一般病院でも施行可能な現実的な形態分類であり,その病型分類である程度の治療内容が決定できるため,われわれ臨床家にとって非常に有用性の高い分類法として用いられている。

FAB分類を診断に用いる際に注意すべき点は,(1)未治療例の質のよい標本を使用すること,(2)まず100倍程度の弱拡大で標本全体を見わたすこと,(3)最低500個の細胞をカウントすることである。


(2)FAB分類の特徴と原則
FAB分類の最大の特徴は,急性骨髄性白血病(AML)と急性リンパ性白血病(ALL)の大別である。つまり,ミエロペルオキシダーゼ(myelo-peroxidase;MPO)染色またはSudan black B染色が必須であり,MPO陽性の芽球が3%以上あればAMLであり,3%未満の場合はALLである。

もう一つの特徴は,急性白血病と骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome;MDS)との大別である。骨髄穿刺塗抹標本で,芽球が30%以上に認められることが急性白血病の診断には必須である。

三つ目の特徴は,芽球の定義である。芽球の定義を明確にしておくことは,普遍性,再現性の上で重要である。FAB分類では,芽球をtype1とtype2に分けている。簡潔にいうと,type 1の芽球は胞体に顆粒がなく,type2の芽球は数個の顆粒を胞体に認める細胞である。


2.急性骨髄性白血病の分類
(1)M0の診断

M0は光顕上MPO陰性で,原則としてtype 1芽球よりなっている。診断確定のためには,骨髄系マーカー陽性(CD13,CD33,または電顕MPO陽性)かつリンパ系マーカーは全く陰性という条件も満たさなければならない。これは,リンパ系と骨髄系両方の形質を同時に持つmixed lineage leukemiaの除外のために必須である。


(2)M1の診断

未分化な芽球が大部分である。type1およびtype2の芽球が全有核細胞の30%以上で,NEC(赤芽球以外の骨髄系細胞)の90%以上を占め,MPO陽性細胞は3%以上である。前骨髄球以降に分化した芽球は10%以下である(図2)

図2
図2
(3)M2の診断

M1との相違点は,芽球が顆粒球系への分化成熟傾向を認めることである.type 1およびtype 2の芽球の合計がNECの30%以上で,90%未満であること,単球は20%以下である。前骨髄球以降に分化した顆粒球も10%以上に認めることを条件としている(図3)。好酸球増多を伴う場合は後述するM4との鑑別が重要である。M2には特異な染色体異常としてt(8 ; 21)を伴うことが多い。比較的治療によく反応し,M4Eoに次いで予後良好である。

図3
図3
(4)M3の診断

M3型芽球は,胞体に極めて多数のアズール顆粒を持ち,前骨髄球様の形態をとるのが特徴的である。核は形や大きさもいろいろであるが,特徴のあるアレイ状のくびれをみることが多い。Auer小体が多数存在する細胞や,それが束になったfaggotsを認めることが診断に必須である(図4)
この典型的なM3と異なり,単球性白血病と見誤りやすいM3variantも存在する。Variant formはアズール顆粒が極めて微細で光顕的には顆粒がないようにみえ,核のくびれがあるために単球性白血病と間違いやすい。この場合でも,よく探すとAuer小体やfaggotsがある細胞があり,診断は確実につけられる。染色体異常として,t(15 ; 17)を伴うことが多く,臨床的にも播種性血管内血液凝固症候群(DIC)を合併することが多い。All-trans retinoic acid(ATRA)の経口投与による分化誘導療法で高い完全寛解率が得られる。

図4
図4
(5)M4の診断

白血病細胞が顆粒球系と単球系の双方に分化傾向を示す(図5)。NEC中に両方の細胞成分がそれぞれ20%以上あることが必要である。非特異的エステラーゼ染色(α-naphthyl butyrate esterase)は単球系が,特異的エステラーゼ染色(naphthol ASD chloroacetate esterase)は顆粒球系が陽性になることが診断に重要であり,両方組み合わせたエステラーゼ二重染色がM4の診断に有用である(図6)
単球系のエステラーゼはフッ化ナトリウム(NaF)により染色性が消失する。M2やM5との鑑別が重要であり,骨髄所見がM2と類似していても,末梢血の単球が5×109/R以上あるとか,血中または尿中のリゾチーム値が正常の3倍以上であれば,M4と診断できる。単球系細胞が骨髄中に80%以上あるときはM5と診断できる。M4の一部に粗大な好塩基性の未熟な顆粒を有する
eosinophiliaを合併する例があり,骨髄NECの5%以上あるものをM4 with eosinophilia(M4 Eo)と診断する(図7)

M2にも好酸球増多を伴う例があるが,その場合の好酸球は形態学的な異常がみられないことから,鑑別は容易である。M4Eoの染色体異常は,inv(16)(p13 ; q22)やdel(16)(q32)あるいは t(16 ; 16)(p13 ; q22)を有し,AML中で最も完全寛解率が高く,予後も比較的良好である。


図5
図5
図6
図6
図7
図7
(6)M5の診断

芽球が単球系の性格を示す.骨髄の80%以上を単球系(単芽球,前単球,単球)が占める。単球系の細胞のうち,単芽球が80%以上を占める未分化型(M5a)(図8)と80%未満の分化型(M5b)(図9)とに分けられる。M5aの芽球は光顕的MPOが陰性のことが多く,非特異的エステラーゼ染色陽性を確認しないと,ALL(L2)と誤診する。血中,尿中のリゾチーム値は高値のことが多く,歯肉腫脹(図10),リンパ節腫大,肝脾腫を伴うことが多い。11番染色体長腕(11q23)に関連する染色体異常が多いことも知られている。


図8
図8
図9
図9
図10
図10
(7)M6の診断

骨髄有核細胞の50%以上を異常な赤芽球系細胞が占め,残りのNECの中で30%以上を芽球が占めることと定めている。赤芽球は巨赤芽球様になり,核も変形核や多核などの形態異常を示す(図11)。PAS染色強陽性を呈することが多い。赤血球関連抗原のglycophorinAに対する抗体による免疫染色も参考になる。染色体異常は複雑なものが多い(major karyotypic abnormalities;MAKA)。化学療法の成績は不良である。

図11
図11
(8)M7の診断

M7の芽球は光顕上MPO陰性で,小型で類円形のtype 1の芽球が多いため,ALLのL1やL2に間違えられることもある。往々にして,骨髄線維症を合併しているため,骨髄穿刺塗抹標本が得られないことが多く,末梢血塗抹標本や骨髄生検を参考にする。特徴的なのは,胞体のblebs(偽足様突起)で,時にアズール顆粒がみられることも診断の助けとなる(図12)
非特異的エステラーゼ染色のうち,α-naphthyl acetate esterase陽性でNaF阻害がみられるため,単球系細胞と誤診することがあるが,α-naphthyl butyrate esteraseが陰性であることで鑑別がつく。しかし,M7と診断するためには,電顕にて血小板ペルオキシダーゼ染色が陽性であるとか,血小板特異的抗原であるglycoproteins IIb/IIIa(CD41a)や第VIII因子関連抗原をモノクローナル抗体を用いて証明することが必要である。

図12
図12
3.急性リンパ性白血病の分類

骨髄塗抹標本中,芽球が30%以上を占めMPO染色で芽球が陰性か3%未満の陽性の場合をいう。しかし,前述のように一部のAMLの場合もMPO陰性なので,モノクローナル抗体を用いた免疫学的診断によりリンパ球系マーカー陽性を確認する必要がある。FAB分類ではL1,L2,L3の三つに分類している.L1とL2の鑑別にはscoring systemがある。


(1)L1の診断

小型で,核小体が不明瞭な均一の細胞からなる(図13)。小児に多く予後がよい。

図13
図13
(2)L2の診断

大型で核小体明瞭な芽球が主体の大小不同の細胞からなる(図14)。成人に多く予後不良である。

図14
図14
(3)L3の診断

Burkitt型と呼ばれ,好塩基性の胞体に空胞形成が目立ち,核小体明瞭な特徴のある大型細胞なので診断は比較的容易である(図15)。L3は必ずB細胞型であり,表面免疫グロブリンを有している。 t(8 ; 14)(q24 ; q32)の染色体異常を示し,8番染色体のc-mycと14番染色体の免疫グロブリン重鎖遺伝子の融合遺伝子を生じている。ALLの中で,最も予後が不良である。

図15
図15
余談であるが,最近,FAB分類に代わる新しいWHO分類が発表された。WHO分類は,大きく骨髄系腫瘍の分類とリンパ系腫瘍の分類に分かれ,それぞれ細分類されている。大幅な変更点があり,急性白血病の定義は,芽球が30%以上から20%以上へと引き下げられた.また,L1〜L3の分類は撤廃された。WHO分類が広く受け入れられるかどうかははっきりしないが,今後も血液学の進歩とともに分類法も変貌していく可能性はある。
4.急性白血病の臨床像
急性白血病の症状は通常は非特異的であるが,正常の造血の抑制と増殖した白血病細胞による臓器浸潤によって生じる。正常造血が抑制されると,貧血の症状や血小板減少による出血傾向,好中球減少による易感染性(肺炎や敗血症)が起こる。細胞が血液由来なので,あらゆる臓器や部位に浸潤する可能性がある。肝臓,脾臓,リンパ節などの腫大がみられる。腎臓,性腺にも浸潤する。中枢神経系や髄膜に浸潤すると頭痛,嘔吐,脳神経麻痺が起こる。ALLはしばしば中枢神経系に浸潤し,急性単球性白血病では歯肉に浸潤しやすい。AML(M3)ではDICを高率に合併する。
5.急性白血病の治療
AMLの治癒を目指すには,完全寛解(CR)に導入することが必要条件である。CRとは骨髄中の芽球が5%未満で,骨髄像が正常化し,末梢血も正常化し,すべての臨床症状が消失した状態である。アントラサイクリン系薬剤(イダルビシンまたはダウノルビシン)とAra-C(シタラビン)の併用療法が寛解導入療法の標準的治療法であり,おおよそ70〜80%の患者にCRが得られる。寛解後療法は,地固め療法,維持療法,強化療法などと呼ばれるが,現在では寛解直後に強力な地固め療法(大量Ara-C療法など)を施行する重要性が明らかになってきている。なお,AML(M3)ではビタミンAの誘導体であるall-trans retinoic acid(ATRA)を用いた分化誘導療法と化学療法の併用が有効で,90%の患者にCRが得られる。

ALLには確立された標準的治療法はないが,ビンクリスチン(VCR)とプレドニゾロン(PSL)がキードラッグでこれにアントラサイクリン系薬剤やL-アスパラギナーゼ(ASP),シクロフォスファミド(CY)を加えた多剤併用療法を行う。また,ALLではAMLに比べて中枢神経系に再発しやすいため,中枢神経系白血病の予防〔メトトレキセート(MTX)の髄注など〕が大事である。小児ALLでは90%以上の患児にCRが得られ,2/3は再発することなく,長期生存し治癒が期待できる。一方,成人ALLの治療成績は極めて悪く,長期生存は20〜40%にしか期待できないのが現状である。



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