| 病態と診断のポイント |
末梢血の血球成分には大別すると赤血球,白血球,血小板が存在するが,その中の1系統以上の血球増殖を認める病態が真性赤血球増加症,骨髄線維症,血小板増加症である。これらの病態は様々な原因で起こり,原疾患に伴う二次性の変化として認められることもある。 |
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1.概 念
真性赤血球増加症,特発性骨髄線維症,本態性血小板血症は慢性骨髄性白血病とともに骨髄増殖性疾患(myeloproliferative disorders;MPN)に含まれる。MPNは1951年にDameshekによって提唱された概念で,造血幹細胞のクローナルな増殖によって起こるが,急性白血病とは異なり,1系統以上の慢性的な血球増殖を特徴とする疾患群である。 以下,真性赤血球増加症,骨髄線維症,本態性血小板血症それぞれの疾患につき述べる。 |
2. 真性赤血球増加症について
(1)分 類
赤血球数,血色素値(Hb),ヘマトクリット値(Ht)が正常より増加している病態が真性赤血球増加症あるいは赤血球増加症であり,その原因により(表1)のように分類される。すなわち循環赤血球の増加はないが,循環血漿量が減少しているために,赤血球が増加しているようにみえる相対的赤血球増加症と,実際に循環赤血球量の増加している絶対的赤血球増加症である。 |
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(2)病態生理
| 相対的赤血球増加症では,脱水や体液喪失により循環血漿量が減少するために,見かけ上の赤血球増加がみられる。ストレス(肥満,喫煙,飲酒など)でも同様の相対的赤血球増加がみられ,ストレス赤血球増加症という。二次性真性赤血球増加症は主にエリスロポエチンの産生増加による。心臓・肺疾患による組織の低酸素血症によりエリスロポエチンの産生が増加する場合と,腎癌・肝細胞癌・小脳血管腫などのエリスロポエチン産生腫瘍などによる。真性赤血球増加症は赤血球の絶対的な増加に加え,白血球や血小板の増加も伴い,経過中急性骨髄性白血病への移行もみられる。造血幹細胞レベルでの異常により自律性に血球産生が亢進していると考えられる。 |
(3)検査と所見
通常,男性で赤血球数6×106/μR以上,Hb18g/dR以上,Ht53%以上,女性では赤血球数5.5×106/μR以上,Hb16g/dR以上,Ht51%以上である。二次性真性赤血球増加症は赤血球数,Hb,Htの増加が基本で,白血球数,血小板数は異常がない。骨髄は赤芽球過形成を呈する。真性赤血球増加症では白血球や血小板の増加も伴い,末梢血中に赤芽球や骨髄球,後骨髄球などの幼弱白血球の出現を認めることもある。通常,網状赤血球の増加はみない.血清ビタミンB12高値や好中球アルカリフォスファターゼスコアの上昇は真性赤血球増加症の診断に役立つ。真性赤血球増加症の主要症候を(表2)に,検査異常を(表3)に示す。脾腫はMPNでよく見かける臨床所見の一つであるが,真性赤血球増加症の患者では50~80%に認める。ときに脾梗塞を起こし,左季肋部の疼痛を訴えることがあり,注意が必要である(図1・2)。 |
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| 図1 | 図2 |
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(4)診 断
| 赤血球増加症を認めたときの鑑別診断を図3に示す。まず臨床所見(脱水を来す下痢や嘔吐,発熱などがないか)や51Cr標識自己赤血球を用いる測定などにより循環赤血球量が増加しているかどうかを調べる。ここで絶対的赤血球増加症の場合は,次に動脈血酸素飽和度を測定し,92%以下の場合は二次性真性赤血球増加症が疑われる。動脈血酸素飽和度92%以上のときは血中エリスロポエチン,血清ビタミンB12や好中球アルカリフォスファターゼスコアを測定するとともに,骨髄検査や染色体検査などを行い,他のMPNや骨髄異形成症候群を鑑別する。JAK2V617F変異を測定する。Polycythemia Vera Study Groupによる真性赤血球増加症の診断基準を(表4)に示す。 |
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| 図3 | 表4 |
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(5)治療と予後
| 相対的赤血球増加症や二次性真性赤血球増加症は原疾患や原因となる病態の治療を優先する。真性赤血球増加症ではHtを45%以下に保つように瀉血を行う。しかし瀉血は白血球数や血小板数のコントロールはできないため,血栓症のリスクのある患者や,瀉血を頻回に必要とする場合などにはヒドロキシウレアを投与する。二次性真性赤血球増加症の予後は原疾患に左右される。高齢者では血栓症の合併が問題になる。真性赤血球増加症から急性白血病への移行が約10%に認められる。 |
3.骨髄線維症について
(1)分 類
骨髄線維症とは,骨髄に広範な線維化を来す疾患の総称である。骨髄線維化を来す病態としては,(表5)に示すように様々なものがあげられる。骨髄の線維化を来す原因疾患により腫瘍性と非腫瘍性に分類される。慢性に経過する特発性骨髄線維症はMPNの一型である。急性骨髄線維症は急性巨核芽球性白血病(M7)に随伴するものがほとんどであるが,それ以外の急性骨髄性白血病や骨髄異形成症候群(MDS)に随伴するものも知られている。二次性骨髄線維症は特発性骨髄線維症以外の原因疾患に基づき,反応性の線維化が起こる病態で,腫瘍性,非腫瘍性疾患があげられる。 |
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(2)病態生理
| 腫瘍性の骨髄線維症における骨髄線維化の機序は,腫瘍細胞(巨核球およびその他のクローナルに増殖した造血細胞)由来の成長因子(TGF-β,PDGF,EGF,bFGF,calmodulin)による線維芽細胞,コラーゲンの反応性増殖である。本症ではさまざまな免疫異常の合併が報告されており,免疫学的機序の関与も指摘されている。 |
(3)検査と所見
診断時無症状であることも多いが,本症で認める所見を(表6)に示す。脾と肝の腫大は髄外造血によるものであり,骨髄線維化とともに本症の基本病像を形成するものである。脾腫は臍下に達する巨大なものを認めることもある。 |
![]() 表6 |
![]() 図4 |
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![]() 図5 |
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![]() 図6 |
(4)診 断
| 確定診断は骨髄生検により,骨髄の広範な線維化を証明することである。骨髄線維症と診断されたら,(表5)に従い腫瘍性,非腫瘍性の鑑別を行う。アイソトープの59Feを用いる鉄代謝の検査で脾臓への取り込みから髄外造血を証明できる。 |
(5)治療と予後
| 急性白血病などによる骨髄線維症に対しては化学療法を行う。巨脾による圧迫,疼痛,門脈圧亢進症などに対しては摘脾が考慮される。摘脾ができない症例に対しては脾臓照射を行う。現在治癒が期待できる唯一の治療法は幹細胞移植であり,若年者でHLAの一致した同胞がいれば考慮する。本症の平均生存期間は約5年とされ,予後はよくない。 |
4. 本態性血小板血症について
(1)分 類
血小板は直径2~3ミクロンと非常に小さな血球である。通常その数は15~30万/μRに調節されているが,40万/μR以上に増加した場合に血小板増加症と呼ぶ。(表7)に示すように様々な原因が考えられるが,血小板増加には,産生の増加と破壊の減少とが考えられる。破壊の減少は脾臓摘出後などに認められる。血小板増加は炎症や腫瘍などに伴う反応性のものと,クローン性の増殖に分けられ,本態性血小板血症はクローン性の増殖を示すMPNの一型である。 |
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(2)病態生理
| 血小板の産生はトロンボポエチン(TPO),インターロイキン6(IL-6),エリスロポエチン(EPO)などの造血因子によって調節されている。その中でもTPOは巨核球の増殖と成熟を促進し,血小板産生を亢進させる主要な造血因子であり,主に肝臓で産生される。血中のTPO濃度は血小板や巨核球の表面に存在するTPO受容体の数によって調節されており,血小板や巨核球の数が増加すると血中のTPO濃度は低下し,逆に血小板や巨核球の数が低下すると血中のTPO濃度は高くなる。本態性血小板血症の患者の血小板はTPO受容体の発現量が低下しており,血小板数の増加にもかかわらずTPOの血中濃度は低下せず高値を示すことが報告されている。TPOは本態性血小板血症の一因と考えられるが,明らかな原因は不明である。 |
(3)検査と所見
| 主な症状は出血や血栓塞栓症である.血栓症は高齢者に多く,喫煙,高脂血症,高血圧などのリスク因子を持つ患者は注意が必要である。静脈血栓より動脈血栓が起こりやすい。出血症状は胃腸管出血が多い。中等度の脾腫を認めることが多く,肝腫大も認められることがある。本態性血小板血症の患者では血小板数が60万/μR以上,通常100万/μRを超えていることが多い。末梢血塗抹標本では一見して,大小不同のある血小板が著増していることがわかる(図7)。巨大血小板(図8)や血小板の凝集像もしばしば認められる。好中球アルカリフォスファターゼスコア,ビタミンB12は通常高値を示す。血小板増加に伴い,偽性高カリウム血症,LDH上昇,偽性低酸素血症を認めることがある。凝固機能は通常正常である。骨髄は過形成で,巨核球の形態異常を認めることもある。 |
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| 図7 | 図8 |
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(4)診 断
本態性血小板血症の診断はいわゆる除外診断で下され,まず反応性の血小板増加を除外し,他のMPNを除外する。Polycythemia Vera Study Groupによる本態性血小板血症の診断基準を(表8)に示した。 |
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(5)治療と予後
| 血栓や出血による合併症が予後を左右するため,予後因子に基づいて治療を決定する。すなわち,60歳以下で血栓症の既往がなく,喫煙や肥満などの心血管危険因子がないものは経過観察のみとする。喫煙や肥満は血栓症のリスクとなるため禁煙,減量を勧める。60歳以上で血栓症の既往があるものは,血栓症の再発のリスクが高いため,治療が必要である。通常ヒドロキシウレア(500~1,500mg/日)を使用し,血小板数40万/μR以下を目標にコントロールする。若年者ではヒドロキシウレアの長期使用による二次性の発癌が問題になるが,現時点でヒドロキシウレアが明らかな発癌性を有するとの報告はない。血小板数が100万/μRを超えるような場合,血栓予防の目的で少量のアスピリンやチクロピジンを投与することがあるが,効果は明らかでない。全体の10年生存率は約70%で,比較的予後良好である。 |













