JUNTENDO UNIVERSITY
血液内科の紹介 患者さまへ 代表的な血液疾患の解説 患者さまの為の解説 研修医オリエンテーション 順天堂大学の学生諸君へ 入局案内
代表的な血液疾患の解説
総論
血液疾患の特徴と分類
血液疾患の診断
血液疾患の治療
白血病・リンパ腫・骨髄腫の診断と治療のポイント
各論
鉄欠乏性貧血・溶血性貧血
再生不良性貧血と骨髄異形成症候群
多血症・骨髄繊維症・本態性血小板血症
慢性骨髄性白血病の特徴
急性白血病
悪性リンパ腫
多発性骨髄腫
出血傾向
造血幹細胞移植
血液疾患に合併する感染症
再生不良性貧血と骨髄異形成症候群
病態・発症機序のポイント
 
  骨髄において,赤血球,白血球,血小板が造られているが,再生不良性貧血と骨髄異形成症候群はこれら3系統に異常を認める疾患である。再生不良性貧血とは,骨髄の細胞密度の低下(低形成)に基づく,末梢血での3系統の減少(汎血球減少)を特徴とする造血障害である。

つまり,骨髄多能性幹細胞が持続的に減少した病態である。骨髄異形成症候群は,骨髄における多彩な血球形態異常を特徴とする慢性難治性の造血障害である。末梢血では多系統の血球減少を来し,急性白血病に移行する頻度が高いことが特徴である。つまり,骨髄多能性幹細胞の異常である。
 
 
1.概 念
再生不良性貧血と骨髄異形成症候群(myelodysplastic syndrome;MDS)は,ともに骨髄多能性幹細胞の障害に基づく疾患である。白血球,赤血球,血小板は,ともに骨髄多能性幹細胞から分化して,形成される(図1)
再生不良性貧血では,骨髄多能性幹細胞が持続的に減少することにより,骨髄の細胞密度が低下(低形成)し,末梢血中の3系統の減少(汎血球減少)を来す。先天性,後天性,二次性(薬剤性,肝炎後)に分類される。骨髄異形成症候群は,骨髄多能性幹細胞の異常により,3系統に量的および質的異常を来した病態である。

以下,再生不良性貧血と骨髄異形成症候群について述べる。
図1
図1
2.再生不良性貧血について
(1)分 類
再生不良性貧血は発症の経過などから,先天性,後天性に分類される(表1)。先天性再生不良性貧血(Fanconi貧血,Zinsser-Cole-Engman症候群)は,しばしば身体障害を伴う遺伝性疾患であり,その原因遺伝子も同定されている。後天性再生不良性貧血は,特発性再生不良性貧血と二次性再生不良性貧血に分類される。再生不良性貧血全体の80%以上は原因の特定できない特発性再生不良性貧血である。二次性再生不良性貧血は薬剤性,放射線性,肝炎後に分類できる。再生不良性貧血全体の約10%が薬剤性であり,肝炎後が4〜10%である。また,特殊型として,再生不良性貧血─発作性夜間血色素尿症(paroxysmal nocturnal hemoglobinuria;PNH)がある。これは再生不良性貧血の経過中に発作性夜間血色素尿症を合併するものである。
表1
(2)病因・病態生理
先天性のFanconi貧血では16番染色体,9番染色体,3番染色体に遺伝子座が同定されており,アポトーシス抑制蛋白の異常に基づくと考えられている。

汎血球減少の他に,身体障害を先天的に認めることが多いのが特徴である。特発性では,原因は不明であるが,骨髄多能性幹細胞が質的ないし量的に障害されていると考えられている。抗胸腺細胞グロブリン(antithymocyte globulin;ATG)やシクロスポリンなどの免疫抑制剤が患者の半数以上に効果があることから,免疫学的機序,すなわちT細胞による造血幹細胞への傷害が原因と推測されている。また,種々の薬剤により骨髄が低形成となり,再生不良性貧血になることがある(表2)。抗癌剤のように大量に使用することにより,骨髄低形成を来す薬剤の他に,クロラムフェニコールなどの抗生物質,抗痙攣剤,染毛剤,H2受容体拮抗剤などは投与量に無関係に特定の人にのみ骨髄抑制を来すこともある。抗癌剤などは,DNA合成障害などにより生じ,一般に不可逆的異常を来すことが少なく,一定期間の休薬により骨髄は回復する。投与量や投与期間により,骨髄障害の程度が推測できる。しかし,クロラムフェニコールなどは,投与量や投与期間などによって障害を推測できない。その薬剤アレルギーとしての機序も不明であり,汎血球減少の発症の予測もできない。

肝炎後再生不良性貧血は,急性肝炎後2〜3カ月後に汎血球減少を来す。25歳未満が80%を占め,比較的若年者に多い。先行する肝炎はnon-A,non-B,non-Cであるが,その肝炎の重症度と再生不良性貧血の発症とは相関がない。特発性と同様に抗胸腺細胞グロブリンやシクロスポリンなどの免疫抑制剤が奏効することなどより,CD8陽性T細胞による幹細胞の傷害が汎血球減少の機序であると考えられている。しかし,特発性に比べて重症であることが多い。また,特発性よりも骨髄異形成症候群や白血病に移行する割合が多いのが特徴である。特殊型である,再生不良性貧血─発作性夜間血色素尿症は,再生不良性貧血の経過中にPNHを合併し,溶血所見,血色素尿が発現するようになる。PNH患者では,血液細胞表面のglycosyl phosphatidyl-inositol(GPI)-anchor型蛋白が欠損している。また,いくつかの補体制御蛋白,すなわちCD55やCD59はこのGPI型蛋白であり,これらの欠損により溶血が生じている。GPI型でない補体制御蛋白CD46は赤血球にのみ発現しておらず,赤血球はわずかな補体の活性に感受性を示すようになる。また,PNH患者細胞では,PIG-A遺伝子に変異があり,この変異によりGPI-anchor蛋白合成が障害されている。

表2
(3)検査と所見
末梢血において,汎血球減少を認める.汎血球減少とは,赤血球数が男性400万/μR未満,女性350万/μR未満,白血球数4,000/μR未満,血小板数10万/μR未満の状態を指す。白血球は,好中球減少のため,相対的リンパ球の増加が生じていることが多い。末梢血網赤血球数は減少している。骨髄穿刺液では細胞数の減少,骨髄生検では造血細胞数の減少・脂肪髄を呈している(図2)
フェロカイネティックスでは,血清鉄および血清フェリチン値の増加と不飽和鉄結合能の減少,血漿鉄半減時間(PIDT1/2)の延長,赤血球鉄交代率(RITR)および赤血球鉄利用率(%RCU)の低下を認める。PNH合併例では,CD59陰性細胞が検出され,進行例では,暗赤褐色尿の出現,尿中ヘモジデリン検出,血中ハプトグロビン値低下,LDH高値,Ham試験,sugar-water試験の陽性化,好中球アルカリホスファターゼの低下を認める。

図2
図2
(4)診 断

汎血球減少を来す他疾患(表3)を除外した上で,末梢血所見,骨髄所見によって,診断する。診断基準を(表4)に示すが,時に骨髄異形成症候群との鑑別が難しいこともある。骨髄細胞に7番染色体欠損などが認められた場合は骨髄異形成症候群と診断されるべきである。PNHの合併はCD59陰性細胞の検出で診断する。肝炎後再生不良性貧血,薬剤性再性不良性貧血はそれぞれ肝炎,薬物の既往歴から推定し診断するが,時に特発性再性不良性貧血との鑑別が困難なことがある。

表3
表3
表4
表4
(5)治療法の選択と予後
重症度によって,治療法が選択される。表5に重症度を,(図3)に治療指針を示す。実際の治療の対象となるのは重症例と,中等症のうち輸血を頻回に必要とする場合と高度の血小板減少の例である。兄弟姉妹間でHLAが一致すれば,骨髄移植を行う。同胞からの骨髄移植では,約80%の長期生存が見込まれる(図4)。同胞間骨髄移植が行えない場合,抗胸腺グロブリン(ATG)療法を行う。ATGによって,約60%の患者に効果がある。ATG無効例にATG再投与を行っても,半数以上の患者に効果がある。
また,最近ではATG療法にシクロスポリンとG-CSFを併用したカクテル療法が行われている。骨髄バンクを介しての非血縁者骨髄移植は10歳未満では効果が見込まれる。これらの治療法にて効果がない場合や,HLAの一致するドナーがいない場合はアンドロゲン療法,stem cell factor(SCF),ステロイドパルス療法などが検討されるが,効果は10〜20%である。

薬剤性を疑われる場合はただちに該当薬剤を中止する。ときに速やかに末梢血液所見が改善することもある。対症的支持療法として,貧血に対しては輸血療法,出血傾向を伴った血小板減少症には血小板輸注を行う。MDSへの移行率は12%であるが,肝炎後再生不良性貧血では,24%の移行率である。

図3 図4
図3 図4
3.骨髄異形成症候群について
(1)分 類

白血病のFAB分類をした欧米の血液学者たちによって急性白血病に移行しやすい原因不明の血球減少症を骨髄異形成症候群(MDS)と分類した(表6)。最近WHOによって新分類が発表された(表7)。WHO分類では,芽球が20%以上の症例は白血病に分類され,慢性骨髄単球性白血病は骨髄増殖性疾患に分類されている。5番染色体長腕の欠損を伴うMDSのうち,骨髄芽球が5%未満のものは低分葉巨核球(図5)を持ち,比較的予後がよいため,WHO分類では独立して分類されているが,骨髄芽球5%以上の症例では白血病への移行率が高く,予後不良である。

表6
表6
表7
表7
図5
図5
(2)病態生理
骨髄多能性幹細胞のクローン性異常が本態であると考えられている。骨髄細胞の分化成熟に異常があり,正常な血球を末梢に供給できない無効造血の状態にある。癌抑制遺伝子の変異の蓄積,アポトーシスの異常などが知られており,これらの異常が病勢進展(白血病化)に関与していると考えられている。
(3)検査と所見

3血球系統に異常を認める。赤血球系では,末梢血における大小不同,多染性,好塩基性斑点を認めたり,有核赤血球の出現を認める。骨髄では,多核であったり,変形した核を持つ赤芽球(図6)を認めたり,巨赤芽球性変化を認めることがある。

顆粒球系では,好中球の顆粒の減少,pseudo-Pelger核異常(図7)や核の過分葉を認める。

巨核球系では,骨髄でmicro-megakaryocyte,単核巨核球(図5)などを認める。

染色体異常は,40〜50%に認められ,7番染色体や5番染色体の欠損,1番染色体や8番染色体の過剰を認める。

図6
図6
図7
図7
(4)診 断

診断は,末梢血と骨髄穿刺液により,(表6)ないし(表7)に従って分類され診断される。骨髄低形成RAでは,再生不良性貧血との鑑別が困難なこともある.FAB分類における,急性骨髄性白血病との鑑別の仕方を(図8)に示す。


図8
図8
(5)治療と予後
予後については,国際スコアリングシステムがある。(表8)に従って,予後判定のためのスコアリングを行い,リスク群に分類する。治療法はリスク群毎に検討される(図9)。低リスク群で,病状の安定している場合は経過観察であるが,高リスク群であれば白血病に準じた化学療法が行われ,さらに骨髄移植の適用が検討される。低リスク群や中間リスク群では,造血刺激療法(蛋白同化ホルモン),分化誘導療法(ビタミンD,ビタミンKなど),免疫抑制療法(ATG,シクロスポリン)が行われている。造血刺激療法は,低リスク群で適用があり,30%で貧血の改善が期待される。

再生不良性貧血からの移行例も多いことから,MDSも再生不良性貧血と同様に免疫学的機序がその病態に関与する可能性が示唆されるようになった。そのため,免疫抑制療法が試され,奏効する症例も報告されている。

表8
表8

図9
図9
page top
| ホーム | 血液内科の紹介 | 患者さまへ | 代表的な血液疾患の解説 | 患者さまのための解説 | 研修医オリエンテーション | 順天堂大学の学生諸君へ | 入局案内 |