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代表的な血液疾患の解説
総論
血液疾患の特徴と分類
血液疾患の診断
血液疾患の治療
白血病・リンパ腫・骨髄腫の診断と治療のポイント
各論
鉄欠乏性貧血・溶血性貧血
再生不良性貧血と骨髄異形成症候群
多血症・骨髄繊維症・本態性血小板血症
慢性骨髄性白血病の特徴
急性白血病
悪性リンパ腫
多発性骨髄腫
出血傾向
造血幹細胞移植
血液疾患に合併する感染症
診断のポイント
1.症候
 
  造血器腫瘍の診断には、臨床像、腫瘍細胞の形態、表面マーカー、遺伝子(染色体を含む)の4つの情報が必要だが、どの情報がもっとも重要かは、疾患により異なる。

どのような症候で来院するかは疾患により大きく異なるが、造血器腫瘍の病態を考えると理解しやすい。すなわち急性白血病では正常な造血能が障害されるとか、腫瘍細胞が腫瘤を形成することにより症状を起こす。正常造血能が抑制されると、貧血に伴う症状や白血球減少による感染症、血小板減少による出血傾向が起こる。出血傾向はDICにより加速される。腫瘤形成に伴う症状としては、中枢神経系の症状や肝脾腫、皮膚腫瘤、歯肉腫脹などさまざまである。白血病の種類により、浸潤しやすい臓器が異なる。

慢性白血病は、健康診断で白血球数の異常高値からたまたま発見されることが多く、症状として出現することは少ない。しかし、易疲労感や微熱、脾腫に伴う腹部膨満感、リンパ節腫脹などがきっかけで発見されることもある。

悪性リンパ腫では、腫瘤形成に伴う症状や腫瘍細胞から産生されるサイトカインが起こす症状がある。前者による症状としてはリンパ節腫脹や肝脾腫、総胆管の閉塞による黄疸など、後者による症状としては発熱、血球貪食症候群に伴う各種症候、高カルシウム血症などがある。Hodgkinリンパ腫はリンパ節から発生するが、非Hodgkinリンパ腫の40%はリンパ節以外の臓器から発生する。発生する臓器はさまざまで、発生する臓器によりどのような悪性リンパ腫かがある程度推定できる。例えば、皮膚に発生するリンパ腫はT細胞リンパ腫が多い。

多発性骨髄腫では、腫瘍細胞の増殖の場である骨髄での正常造血能の抑制に伴う症状と腫瘍細胞が産生する免疫グロブリンやサイトカインが起こす症状がある。後者による症状としては、骨融解に伴う病的骨折や腰痛、腎機能障害、アミロイドーシス、高カルシウム血症、過粘稠度症候群などがある。
 
 
 
2.検査所見
 
  血算、生化学検査、画像所見から診断されることも多い。例えば、白血病では末梢血中へ異常細胞が出現するとか白血球数が異常に増えているとかだが、ヘアリー細胞白血病では、末梢血の塗抹標本を作製するとき自然乾燥標本のほうが細胞表面の毛状突起を見出しやすい。慢性リンパ性白血病では、カバーグラスで塗抹標本を作製すると圧砕された細胞が多数出現するが、斜めに傾けたスライドグラスに血液をたらしてカバーグラスを使うことなくそのままドライヤーで乾燥させると、正確なカウントが可能になる。悪性リンパ腫ではCTなどの画像診断、多発性骨髄腫では免疫グロブリンの異常、とくにM蛋白の出現がある。

注意すべき点としては、白血病だからといって必ずしも白血球数が多いわけではない。急性白血病の約25%では白血球数は減少する。急性前骨髄球性白血病では汎血球減少症を呈することが多い。血清中にM蛋白が出現しない骨髄腫もある。Bence Jones型骨髄腫である。この骨髄腫はIgG型骨髄腫に次いで頻度が高く、血清の免疫グロブリンは減少してM蛋白を認めず、尿中にBence Jones蛋白を認める。高齢者で腰痛、貧血、低ガンマグロブリン血症を認めたら、積極的に本症を疑い、尿の免疫電気泳動検査を行う。多発性骨髄腫は血清にM蛋白を認めると信じている医師が多く、単なる腰痛との診断でなかなか確定診断がつかず、血液内科医を受診したときには病期が進んでいて手の施しようがないこともあり、注意を要する。
 
 
 
3.診断確定のための検査
 
  急性白血病の診断は骨髄検査で行う。May-Giemsa染色、ペルオキシダーゼ染色やエステラーゼ染色などの特殊染色、表面マーカー検査、染色体検査、FISH法やPCR法による代表的な融合遺伝子の検査を行う。染色体検査の結果が出るには数週間を要するが、FISH法やPCR法を用いるとt(8;21)やt(15;17)などの検査結果は数日で判明する。慢性骨髄性白血病の診断にはフィラデルフィア(Ph)染色体の有無が重要である。骨髄の染色体検査のみならず末梢血のFISH法でも検出できる。本態性血小板血症などの慢性骨髄増殖性疾患で慢性骨髄性白血病を否定したいときは、末梢血FISH法が有用である。慢性リンパ性白血病とその類縁疾患は、臨床像、細胞形態、表面マーカー、遺伝子検査などから総合的に診断する。

悪性リンパ腫の診断にはリンパ節などの組織の生検が必須である。生検組織では、表1の検査を行う。ただし、これらの検査をすべてルーチンに行う必要はない。とくに凍結組織標本を用いた免疫染色や電顕、細菌培養を行うことは少ない。凍結組織標本を用いた免疫染色は、細胞浮遊液を用いたモノクローナル抗体検査や病理組織標本の免疫組織化学で代用できる。感染症、とくに結核を疑ったら、結核菌のPCR検査を行う。

まず病理組織標本、捺印標本を作製し、細胞浮遊液の表面マーカー、染色体検査を行い、残りの組織は凍結保存しておく。必要ならあとで凍結組織を用いて、遺伝子解析を行う。ホルマリン固定標本でのFISH法による染色体検査も可能である。摘出した標本をすべてホルマリンに漬けることはしないで欲しい。染色体・遺伝子検査が不可能になり、多くの表面マーカー検査も不可能になるからである。

多発性骨髄腫の診断は、M蛋白、骨髄の形質細胞の数や性状などから確定する。MGUS (monoclonal gammopathy of undetermined significance) との鑑別が重要である。骨髄腫細胞は骨髄でびまん性に増加しているわけではないので、穿刺部位に腫瘍細胞が見出されないことがある。髄外に腫瘍を形成してM蛋白を産生していることもある。M蛋白が血液中で検出されないのはBence Jones型のときだが、稀に非分泌型のこともある。

造血器腫瘍を疑ったら骨髄の検査や組織の生検を行うが、検査に使ったあとの残りの検体は凍結保存しておくのがいい。出来れば細胞を生かしたままで、むずかしいならそのまま凍らせておく。これらの検体は、その後の検査や研究に利用できる。ただし、あらかじめ患者から許可を得ておく必要がある。


 
 


治療のポイント
1.治療法選択のための予後の予測
 
  予後がいいか悪いかは疾患により大きく異なるが、進行の程度(病期)や染色体異常などさまざまな因子が関係してくる。一般には、予後不良が予想されるときは造血幹細胞移植を含む強い治療を、予後良好と思われるときは軽い治療を選択する。したがって、予後を予測することは、単に患者の将来を推定するだけではなく、治療法の選択に密接に関わってくる。。

急性白血病でもっとも重要な予後因子はどのような染色体異常があるかで、例えばt(8;21)、t(15;17)などの急性骨髄性白血病は予後良好で、Ph染色体陽性の急性リンパ性白血病は予後不良である。年齢、表面マーカーや初診時の白血球数、完全寛解に入るまでの期間なども予後に影響する。

慢性骨髄性白血病では、Sokalスコアなどが予後を予測する方法として使われてきたが、現在ではこれらの方法よりもイマチニブ投与後の血液学的効果(白血球や血小板が正常化したか)、細胞遺伝学的効果(Ph染色体がどの程度減ったか)が予後予測因子として重要である。慢性リンパ性白血病では、Rai分類やBinet分類などの病期分類が予後を予測する指数として用いられてきたが、同じ病期でも進行が早い例と遅い例とがあり、チロシンキナーゼファミリーのZAP-70が発現している例の予後が悪いことがはっきりしてきた。

Hodgkinリンパ腫や非Hodgkinリンパ腫でも、予後因子が明らかになっている。Hodgkinリンパ腫では、年齢や病期、血清アルブミン値など7つの因子が予後に関係する。びまん性大細胞型B細胞リンパ腫などのaggressive lymphomaでは、年齢が60歳以上、LDH値が高い、performance statusが悪い、節外病変の数が多い、病期が進んでいるなどが重要で、これらの予後因子がいくつあるかで予後が予測される(International Prognostic Index)。すべての予後因子がそろった予後不良群では、自家造血幹細胞移植のような強い治療法を考える。濾胞性リンパ腫では、年齢、病期、LDH値、ヘモグロビン値などが予後因子として上がっており、層別化治療に役立つ指標と考えられる。

多発性骨髄腫の病期分類にはDurie & Salmonの分類が用いられている。さらに血清β2ミクログロブリン値や血清アルブミン値も加味した病期分類も使われているが、今後は染色体異常(13染色体の欠失やhypodiploidyは予後不良)や遺伝子異常も反映した病期分類が必要である。
 
 
 
2. 化学療法か造血幹細胞移植か
 
  造血器腫瘍は他の固形腫瘍と異なり、化学療法に感受性が高く、比較的容易に完全寛解に導入できるという特徴がある。そして、さらに強い治療法が造血幹細胞移植である。化学療法を行うべきか、あるいは造血幹細胞移植を行うべきかが問題となる。層別化したあとの予後の予測に基づいて治療法が選択されることが多いが、年齢や臓器機能などの要素も入ってくる。疾患ごとに、どのような時期にどのような移植が許容されるかをまとめたガイドラインが2002年に日本造血細胞移植学会から刊行されており、これを参考に移植適応を決めるのがいい。

化学療法として何をどのように使うかは、当然ながら疾患により大いに異なる。急性白血病に対してはJALSG (Japan Adult Leukemia Study Group) が行っている治療法が薦められる。悪性リンパ腫では、Hodgkinリンパ腫と非Hodgkinリンパ腫では治療法が異なり、非Hodgkinリンパ腫でも疾患ごとに治療法が異なる。さらに、予後因子によっても左右される。rituximabを加えたCHOP療法(R-CHOP)がB細胞系リンパ腫に対して用いられているが、他に数多くのプロトコールが提唱されている。どの治療法を選択するかは、発表論文のエビデンスのレベルも考慮して決める。

今後、造血器腫瘍の遺伝子異常がさらに明らかになるにつれて、異常な遺伝子あるいはその産物を標的にした治療法がますます盛んになるものと思われる。従来の薬剤とは大きく異なる作用機序を持つ新薬が続々と登場する。これらの新薬は無差別的にDNAを傷害することはないために毒性は少ないことが予想され、単剤として用いるよりも併用療法として使うようになることが多いであろう。どのような組み合わせがいいのか、薬剤の選択に困る時代が続くことになるだろう。
 
 
 
3.造血幹細胞移植なら、どのような移植を行うべきか
 
  造血幹細胞移植にも飛躍的な進歩がみられる。造血幹細胞移植を選択するに際して、どの移植法がより優れているのかを検討する必要がある。自家移植か同種移植か、幹細胞のソースは骨髄か末梢血か臍帯血か、骨髄破壊的移植か骨髄非破壊的移植(ミニ移植)か、コンデイショニングをどうするか、移植の時期はいつがいいか・・・治療を開始するに当たって、多くの検討課題がある。
 
 
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