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代表的な血液疾患の解説
総論
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血液疾患の診断
血液疾患の治療
白血病・リンパ腫・骨髄腫の診断と治療のポイント
各論
鉄欠乏性貧血・溶血性貧血
再生不良性貧血と骨髄異形成症候群
多血症・骨髄繊維症・本態性血小板血症
慢性骨髄性白血病の特徴
急性白血病
悪性リンパ腫
多発性骨髄腫
出血傾向
造血幹細胞移植
血液疾患に合併する感染症
血液疾患に合併する感染症
 
  血液疾患に合併する感染症は,他の基礎疾患におけると同様に各種の感染症を併発する。特に強力な化学療法によって白血球減少を来した時期の発熱は必発であり,その原因が感染症か,基礎疾患か,あるいは他の原因によるものかの鑑別が難しい。白血球数の回復と共に解熱傾向を示すのが常である。しかしこの時期に次の化学療法時に合併する「感染症の芽」が形成されていることがあり,十分な注意が必要である。

通常,最初にみられる感染は細菌性感染症である。細菌性感染症は各種の抗菌剤によってある程度制御可能であり,軽快した後にみられるものに,所謂日和見感染症がある。これは抗菌剤不応の発熱としてみられる。

日和見感染症には各種の肺炎を含む気道感染症の他,菌血症がある。なかでも真菌血症は消化管の潰瘍性病変から侵入する他,広域抗生剤投与により腸管のnormal flora(正常菌叢)に変化を来し,増殖した微生物が腸管を通過して起こすtranslocationによる菌血症あるいはIVHカテ−テル留置によるカテ−テル関連菌血症などがある。

日和見感染症の原因には,Aspergillus spp.,Candida spp.やCryptococcus neoformansなどの真菌,cytomegalovirus(CMV)などが主なものである。現在真菌とされているPneumocystis cariniiによるニュ−モシスチス症はST合剤(sulfamethoxazoleとtrimethoprimの合剤)の予防投与によってかなりの割合で発症を抑制できる。

 
 
1.真菌症
我々の病院における剖検例にみられた真菌症を集計してみると,12年間(1985〜1996年)の剖検総数2,304例のうち真菌症を認めた症例は90例(3.9%)で頻度の高いものではなかった。しかし血液疾患のみに限ってみると(表1)25.2%(139例中35例)を占め,しかも急性の経過をとる疾患に多くみられた。アスペルギルス症およびカンジダ症が多く,クリプトコックス症は比較的少ない。その他の真菌症には,接合菌症,ノカルジア症や菌種不明が含まれている。

Candida spp.はnormal floraの一部を構成しているため,喀痰・便などから検出されたとしてもその病原的意義は少ない.しかし外因性真菌であるAspergillus spp.やC.neoformansが検出されたときには治療を開始すべきであろう。基本的には病巣から直接採取した検体から真菌が検出された場合,直ちに治療を開始する.しかし,組織侵入型のアスペルギルス症やカンジダ症は予後不良になりやすい。

血液培養で検出される真菌は,小栗1)によると12年間(1989〜2000年)では培養陽性例全体の6.5〜39%(平均 15.7%)であり,Candida spp.が96%を占める。Aspergillus spp.やC.neoformansが検出されることは極めて稀である(図1)

深在性真菌症では菌を検出することは比較的稀であり,補助診断法を活用してエビデンスを得ることが必要である.血清(漿)学的補助診断法には(表2)に示すものがある。

一般的には真菌症の診断には(1→3)-β-D-glucan測定法が用いられる。しかし接合菌やC.neoformansは細胞壁にこれを保有しないか極めて微量しか保有しないため,これらの真菌による感染症では診断に役立たない。またカンジダ症,アスペルギルス症やニュ−モシスチス症との鑑別はできない。そのため臨床症状を考慮して,polymerase chain reaction(PCR)法など他の補助診断法を活用する.PCR法のうちgeniQはコピ−数の変動で臨床経過を判別できるが,治療開始後比較的早期に陰性化するなど検査法の特性を知る必要がある。

真菌がヒトと同じ真核生物に属するため,真菌のみに作用し,ヒトに影響のない薬剤の開発が困難なこともあり,深在性真菌症の治療には現在アンホテリシンB(AMPH),フルシトシン(5-FC)およびアゾ−ル系薬剤であるフルコナゾ−ル(FLCZ),イトラコナゾ−ル(ITCZ),ミコナゾ−ル(MCZ)の5剤があるに過ぎない〔開発中あるいは市販間近の薬剤にmicafungin(FK-463),voriconazole,liposomal AMPH(AmBisome),ITCZの静注剤などがあるが,ここでは省略する〕。

表
表1
図
図1
表
表2
2.アスペルギルス症
血液疾患では組織侵入型のアスペルギルス肺炎として認められる。その原因にはA. fumigatus,A. flavus,A. nigerやA. terreusなどがある。これらの真菌は血管に親和性があり梗塞を起こす。経気道感染であり,原則として肺に病変を認める。

病理学的には肉芽腫を形成する他,血管に親和性を有し菌糸が血管内で発育するのに伴った出血性梗塞像を呈する(図2)

発熱,咳嗽,呼吸困難などを訴える他,突発性の胸痛,血痰,頻脈がみられ,梗塞部に一致した胸壁の知覚過敏を伴うことがある。

化学療法による白血球減少期間が長引けば,アスペルギルス感染の確率が高い。特に著明な顆粒球減少状態に,抗生剤を変更しても発熱が改善せず,胸部X線像に異常陰影を認める場合,本症を疑う。

胸部X線撮影時期によるが,結節状(図2A,B)・浸潤影(肺炎様)・楔状陰影(図2C)・空洞様陰影などを呈する他,air-meniscus signを呈する。その他,稀に胸水貯留像がみられる。微細な病変はCT-scanではじめて認められることがあるため積極的に実施する。

喀痰培養は繰り返し行う.空洞を形成している場合には真菌を検出する確率が高い。しかし結節状陰影程度では検出率は低い。そのため肺胞洗浄や肺生検などを行って診断に努力する。

しかし気管支鏡などの検査を行えない症例では血清(漿)学的補助診断法に頼らざるを得ない。この場合,抗体検索法は意味がなく,抗原検索を行う。スクリ−ニングには(1→3)-β-D-glucan測定を行う。カンジダ症に比べて検出率は低く70%程度2)であるが,臨床経過と平行して測定値が変動するため治療効果の判定に役立つ。しかしカンジダ症やニュ−モシスチス症との鑑別はできない。そのためPCR法(geniQアスペルギルス)の他,Pastorexィ Aspergillus,Plateliaィ Aspergillus等を行う。

治療にはAMPHあるいはITCZが主に用いられるが,稀にMCZを用いることもある。

図
図2A

図
図2B

図
図2C

図
図2D

図
図2E
3.カンジダ症
Candida albicans,C. tropicalis,C. parapsilosis,C. krusei,C. glabrata,C. guilliermondiiなどが主な原因真菌である。肺カンジダ症は嚥下性肺炎としてみられることが多く,混合感染の形をとる。またAIDS患者では口腔・咽頭・食道などの粘膜病変が多くみられるが,血液疾患では多いものではない。

カンジダ血症では肝・腎・脾など全ての臓器に散布性病変を作る。

しかし診断が難しく治療に難渋する。肺病変がみられないか両側性に僅かな陰影を認める程度で抗生剤不応の不明熱が続くときには,血液培養を繰り返し行う。菌陰性の場合には,血清(漿)学的補助診断法を駆使して診断に努力する。まず(1-3)-β-D-glucan測定を行う.先にも述べたように他の真菌症との鑑別はできない。そこでPCR法(geniQカンジダ)やPastorexィ Candida等を併せ行う。

カンジダ血症ではカンジダ眼内炎の有無を検索する。網膜病変を繰り返し検索することによって診断率は上昇する。その他,心エコ−やCT-scanを行って心・肝・脾・腎などの病変を検索することも重要である(図3)

真菌性眼内炎はCandida spp.によるものが最も多い。多くは,はじめに「物が歪んでみえる」といった症状を訴える。初期には軽度の結膜充血・前房内および硝子体への炎症細胞の遊出を認め,次いで眼底後極部に黄色〜黄白色の浸出性肉芽性病変を形成する(図4)。この時期には結膜充血や飛蚊症がみられる。悪化すると硝子体内に綿球様体が出現し,硝子体の混濁がさらに進み,眼底は見づらくなり,網膜剥離を合併することもある。早期に治療を開始しない限り,視力の回復は望めない。

治療にはFLCZやAMPHが多く用いられるが,C. krusei,C. glabrataなどのFLCZ耐性菌にはFLCZに代えてITCZを用いる。MCZが有効なこともある.5-FC単独で用いられることは稀で,多くは他の抗真菌剤と併用する。

図
図3A

図
図3B

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図3C

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図3D

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図3E
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図3F

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図3G

図
図4
4.クリプトコックス症
外因性真菌であるC. neoformansによる感染症。稀に皮膚病変から侵入するが,多くは経気道感染であり,肺病変を形成する他,髄膜に親和性を有するため,髄膜炎を起こす。髄膜炎はAIDS患者では多いが,血液疾患では稀である。

胸部X線像は胸膜に近い末梢に,はじめ結節状あるいは浸潤様陰影(図5)を,後に空洞様陰影を呈する。初期には喀痰中に菌を検出することは比較的少ないが,空洞を認める時期には菌は喀出されやすく検出率は高い。積極的には気管支鏡を行い肺胞洗浄・生検を行って検索することも必要である。

髄膜炎では発熱,頭痛等の脳圧亢進症状を認めるが,診断は髄液の墨汁染色や培養を行ってC. neoformansを検出することによる。

血清学的抗原検索法にPastorexィ CryptococcusとSerodirect Eiken Cryptococcusがある。測定値は臨床経過と平行して変動する。後者は前者に比べて感度が高く,高い値を示す利点があるが,治療終了までの期間が長引く傾向がある.治療にはFLCZ,AMPH,ITCZやMCZが用いられる。

図
図5A
図
図5B
5.サイトメガロウイルス感染症
CMVはヘルペスウイルス属に分類される。多くは不顕性感染の形をとるが,稀に初感染で発病する。血液疾患では潜在していたCMVが,化学療法による免疫不全状態下に賦活化されて発症する場合が多い。そのため入院時にCMVに対する抗体検索を行うことが大切である。

臨床的には主に間質性肺炎あるいは網膜炎としてみられる。肺炎の初期には本症によるものか,基礎疾患によるものか,あるいは他の感染症によるものか鑑別が難しい。適切に対応しないと,全肺野に拡がるスリガラス状陰影を呈するようになり,予後不良である(図6)

CMVは血行性に伝播して網膜炎を起こす。視神経や黄斑部が侵されると視力低下を訴える。初期には眼底に綿花状白斑類似の軟らかい網膜白斑や顆粒状小白斑が眼底後極の網膜血管の周囲に散在する。徐々に癒合して網膜血管に沿って拡大し,小出血を伴って黄白色の網膜壊死巣を形成する(図7)。病巣周囲の網膜血管は拡張・蛇行し,白鞘を伴い強い血管炎像を呈する。

血清(漿)学的補助診断には,抗体検索は臨床的意義は少なく,抗原検索が必要である。抗原検索にはPCR法,間接酵素抗体法(C10,C11)や直接酵素抗体法(C7-HRP)があり,C7-HRPが比較的鋭敏である。

治療にはガンシクロビル(GCV)が用いられる.肺病変ではGCVを全身投与する.網膜炎では眼注を併用する。

図
図6A
図
図6B
図
図7
文 献

1)小栗豊子 : 臨床と微生物, 28 : 155〜160, 2001.
2)Mori T, et al : Jpn J Med Mycol, 40 : 223〜230, 1999.
3)Mori T, et al : Med Mycol, 36 : 107〜112, 1998.
4)Mori M, et al : Clin Inf Dis, 25 : 1470〜 1471, 1997.
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